ラストワンマイルとは、荷物が配送拠点を出てから受取人の玄関に届くまでの最後の区間のことです。バンがデポを出発し、住宅地まで走り、数十か所に停車して戻ってきます。宅配物流のコストの大部分はここに集中しており、ラストワンマイル配送を効率化する取り組みの多くは、どの車両を使い、どの順序で、どの道を走るかというルートに向けられています。
私たちは、配達ルートの時間のうち、ルートそのものがどれだけを占めるのかを測定しました。マドリード、パリ、アムステルダムの6つの配達エリアで、OpenStreetMapから実在する住所を選び、MapAtlasのMatrix APIですべての組み合わせの運転時間を取得して、停車順序を最適化しました。そのうえで、ドライバーが駐車場所を探す時間と停車中の作業時間を、公開されている2つの現地調査から加えました。30件の配達ルートでは、運転は全体の18〜29%です。残りの時間は、駐車場所探しと荷物を玄関まで届ける作業に使われています。
測定した内容
各都市に2つの配達エリアを設定しました。中心部の密集地区(半径1 km)と郊外の地区(半径2 km)です。どちらも市の外縁にあるデポから配達します。
| 都市 | 密集地区 | 郊外地区 | デポ |
|---|---|---|---|
| マドリード | チャンベリ | ラス・ロサス | コスラダ |
| パリ | 11区 | サン=モール=デ=フォセ | ジュヌヴィリエ |
| アムステルダム | デ・パイプ | アムステルフェーン | ウェストポールト |
- 配達先: 各エリア内のOpenStreetMapの住所点から、固定シードでランダムに選びました。15件、30件、60件のルートには同じリストの先頭15件、30件、60件を使っています。エリアは同じままで、密度だけが変わります。
- 運転: デポと各配達先の間の移動時間は、MapAtlas Matrix APIで車を指定し、2026年9月30日にリアルタイムの交通情報なしで取得しました。停車順序は最近傍法に2-optとor-optを組み合わせて最適化しています。
- 停車中の作業時間: 地図からは測定できないため、2つの現地調査の値を使いました。
- 1回の停車あたり8.1分: Allenらが計測したロンドン中心部の宅配ルートにおける平均停車時間(dwell time)です。ドライバーが荷物を降ろし、1軒以上の玄関まで歩いて戻り、荷物を手渡す間、バンが止まっている時間を指します。
- 1回の走行あたり2.3分の駐車場所探し(cruising for parking): Dalla ChiaraとGoodchildが推定した平均値です。シアトル中心部での2,900件の宅配走行のGPS記録から求めたもので、走行時間全体の28%にあたります。
ラストワンマイル問題:30件のルートの時間の内訳
| エリア | デポとの往復 | 配達先間の運転 | 駐車場所探し | 停車中の作業 | ルート全体 | 運転の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マドリード・チャンベリ | 35分 | 35分 | 69分 | 243分 | 383分 | 18% |
| マドリード・ラス・ロサス | 57分 | 62分 | 69分 | 243分 | 431分 | 28% |
| パリ11区 | 55分 | 58分 | 69分 | 243分 | 425分 | 27% |
| パリ・サン=モール=デ=フォセ | 60分 | 70分 | 69分 | 243分 | 442分 | 29% |
| アムステルダム・デ・パイプ | 44分 | 48分 | 69分 | 243分 | 404分 | 23% |
| アムステルダム・アムステルフェーン | 34分 | 57分 | 69分 | 243分 | 402分 | 23% |
ここから3つのことがわかります。
時間の大半は停車地点で使われます。 停車中の作業はどのルートでも全体の55〜64%を占め、駐車場所探しがさらに16〜18%を占めます。これはロンドンの調査で直接観測された結果と一致します。バンはルート全体の62%の時間駐車しており、ドライバーは1ルートあたり平均7.9 km歩いていました。
デポとの往復は固定コストです。 配達件数にかかわらず、エリアへの移動と帰りに1ルートあたり34〜60分かかります。チャンベリでは、これが運転時間全体の半分です。デポやマイクロハブをエリアの近くに置けば、停車順序の工夫よりも多くの運転時間を削れます。
郊外では1件あたりの運転時間が長くなります。 30件の場合、密集地区では配達先間の運転が1件あたり1.2〜1.9分、郊外地区では1.9〜2.3分でした。郊外エリアの面積は4倍あるため、同じ件数でも配達先が4倍の範囲に散らばります。
配達密度:件数が増えると1件あたりの運転時間は減る
同じエリアで15件、30件、60件のルートを比べると、配達密度の効果がわかります。
| エリア | 15件 | 30件 | 60件 | 15件から60件への変化 |
|---|---|---|---|---|
| マドリード・チャンベリ | 1.32 | 1.17 | 0.98 | -26% |
| マドリード・ラス・ロサス | 2.17 | 2.06 | 1.39 | -36% |
| パリ11区 | 2.53 | 1.92 | 1.61 | -36% |
| パリ・サン=モール=デ=フォセ | 2.88 | 2.32 | 1.95 | -32% |
| アムステルダム・デ・パイプ | 2.36 | 1.60 | 1.47 | -38% |
| アムステルダム・アムステルフェーン | 2.26 | 1.89 | 1.51 | -33% |
数値は配達先間の運転時間で、1件あたりの分数です。
同じエリアで配達件数を4倍にすると、1件あたりの運転時間は26〜38%減りました。配達先同士が近くなり、1区間ごとの距離が短くなるためです。宅配事業者が配達密度(drop density)を重視する理由はここにあります。複数の荷主の荷物を1つのルートにまとめると、見た目以上の時間を節約できます。
停車時間が短い場合
現地調査の停車時間は、企業向けの配達が多い都心部のものです。ロンドンのドライバーは1回の停車で平均2.1事業所、3.8個の荷物を扱っていました。住宅の玄関先への配達なら、もっと短く済む場合があります。そこで、停車中の作業を1件あたり3分とし、駐車場所探しをゼロにした軽いシナリオも計算しました。
この前提では、30件のルートに占める運転の割合は44〜59%になり、ルート全体は383〜442分から161〜220分に短くなります。ドライバーが1時間に配達できる件数は、4〜5件から8〜11件に増えます。
この最も有利なケースでも、停車地点での時間は1日の約半分を占めます。ルートは重要ですが、改善できる要素のひとつにすぎません。
ラストワンマイルの時間を短縮できる場所
玄関で。 座標が屋根の中心の代わりに建物の入口を指し、大きな建物では正しい入口を指していれば、徒歩の距離と歩きながら探す時間が減ります。違いは建物入口のジオコーディングで説明しています。
路肩で。 シアトルの調査では、荷さばき用に確保された路肩のスペースが多く、配達先に路外駐車場が多い場所ほど、駐車場所探しの時間が短くなっていました。荷さばきスペースの設置は自治体が決めることですが、ルート計画でも活用できます。既知の荷さばき地点に停車を計画し、近くの住所をまとめて1回の駐車で回ってください。
停車順序で。 運転が占める18〜29%の時間に対しては、順序のよいルートが引き続き効きます。私たちの検証では、単純な最近傍法の順序は最適解より中央値で12%遅くなりました。時間指定、積載量、複数車両の扱いはルート最適化ガイドで解説しています。
配送ネットワークで。 デポを配達エリアの近くに置き、同じエリアでの1ルートあたりの件数を増やせば、固定コストである往復の運転と、1件あたりの運転時間の両方を同時に減らせます。
デポから一定時間でバンがどこまで届くかは、移動時間マップで任意の住所について到達範囲を描いて確認できます。
運転部分を自分で計算する
この記事で測定した部分は、エリアごとに2回のAPI呼び出しとソルバーだけで再現できます。まず、デポと各配達先の間の移動時間をリクエストします。
curl -X POST "https://gateway.mapmetrics-atlas.net/matrix/?token=YOUR_TOKEN" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"sources": [{"lat": 40.4290, "lon": -3.5470}, {"lat": 40.4351, "lon": -3.7012}, {"lat": 40.4329, "lon": -3.7068}],
"targets": [{"lat": 40.4290, "lon": -3.5470}, {"lat": 40.4351, "lon": -3.7012}, {"lat": 40.4329, "lon": -3.7068}],
"costing": "auto"
}'
返ってきた移動時間をもとに停車順序を決め、1件あたりの停車時間を加えます。ドライバーのスキャンデータがあればその値を、なければ上で紹介したような現地調査の値を使ってください。ルート全体に占める運転の割合を見れば、ルーティングと停車地点のどちらに投資すべきかがわかります。
手法と制約
- エリアとデポ: 各密集地区では地点を中心に半径1 km、各郊外地区では半径2 kmの範囲としました。デポは都市ごとに市の外縁に置いた固定地点(コスラダ、ジュヌヴィリエ、ウェストポールト)です。私たちが選んだ地点で、実在する配送業者の拠点とは関係ありません。
- 配達先: 各エリア内で
addr:housenumberを持つOpenStreetMapのノード、ウェイ、リレーションから、固定シードで64件を選びました。パリの密集エリアの1件は車で到達できなかったため、リストの次の住所に置き換えています。実際のルートはランダムではありません。配送業者は住所をまとめて割り当て、1つの住所に複数の荷物が届くこともあります。 - 運転: MapAtlas Matrix API、costingは
auto、2026年9月30日、出発時刻の指定なしで取得したため、ラッシュアワーの渋滞は含みません。停車順序は最近傍法に2-optとor-optを組み合わせて求めました。より強力なソルバーを使えば運転時間は数%短くなりますが、全体の傾向は変わりません。 - 停車中の作業時間: 2つの現地調査の平均値をすべての停車に適用しました。1回の停車あたり8.1分の停車時間(ロンドン中心部、宅配事業者、Allen et al. 2018)と、1回の走行あたり2.3分の駐車場所探し(シアトル中心部、Dalla Chiara and Goodchild 2020)です。どちらも今回とは別の都市の、しかも中心業務地区のデータです。そのため軽いシナリオも併せて示しました。いずれも平均値で、実際の停車時間は数秒から数十分まで幅があります。
- 含まれていないもの: デポでの積み込み、休憩、不在による持ち戻りと再配達、カーゴバイクや徒歩の配達員です。
データのダウンロード:last-mile-delivery-2026-09-30.csv(エリアと配達件数ごとに1行。エリア内の住所数、デポとの往復とエリア内の運転時間(分)と距離(km)、停車時間の前提、2つのシナリオそれぞれのルート全体の時間と運転の割合を収録しています。住所 © OpenStreetMap contributors、ODbL。派生データはCC BY 4.0 MapAtlas)。
スクリプトと生データは、調査アーカイブのscripts/seo/blog-keyword-research/last-mile-delivery.mjsとdocs/blog-keyword-research/last-mile-delivery-2026-09-30.jsonにあります。
関連記事
移動時間は距離行列(distance matrix)から得ています。複数の車両を使う計画全体についてはルート最適化とはをお読みください。
この記事で使った移動時間はMatrix APIが返します。Optimize Route APIは1回の呼び出しでルートの停車順序を決め、Geocoding APIは配達先の住所を座標に変換します。
よくある質問
ラストワンマイルとは何ですか?
ラストワンマイルとは、荷物が地域の配送拠点(デポやハブ)を出てから、受取人の玄関に届くまでの最後の区間のことです。多くの場合、バンやカーゴバイクがデポを出発し、配達エリアまで走り、数十か所に停車してから戻ってきます。荷物ごとに停車、駐車、玄関までの徒歩が必要になるため、宅配物流の中で1個あたりのコストが最も高い区間です。
配達ドライバーが最も時間を使うのはどこですか?
最も時間を使うのは道路上の走行よりも停車地点です。現地調査では、ロンドン中心部で1回の停車あたり平均8.1分、シアトルで1回の走行あたり平均2.3分の駐車場所探しが計測されています。この停車時間を、マドリード、パリ、アムステルダムの30件の配達ルートで測定した運転時間と組み合わせると、運転はルート全体の18〜29%にとどまり、残りは駐車場所探しと停車中の作業でした。
配達ドライバーは1時間に何件配達できますか?
主に1件あたりの停車時間で決まります。今回使った現地調査のように停車中の作業が8.1分、駐車場所探しが2.3分なら、運転を含めて1時間に約4〜5件です。玄関先に3分で置き、玄関前に駐車できる場合、測定したルートでは1時間に8〜11件になりました。配達密度も効きます。同じエリアで配達件数を15件から60件に増やすと、1件あたりの運転時間は26〜38%減りました。
ラストワンマイル配送の時間はどうすれば短縮できますか?
まず停車地点に取り組みます。建物の入口を指す座標、玄関に近い合法的な荷さばきスペース、近くの複数の住所をまとめて1回の駐車で回る運用です。次に、同じエリアでの1ルートあたりの配達件数を増やし、ルート最適化APIで停車順序を最適化します。最後に、デポを配達エリアの近くに置きます。今回の都市では、デポとの往復が1ルートあたり30〜60分の固定コストになっていました。

