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直線距離と道路距離の違い:実際の移動はどれだけ長くなるのか

116組の都市間ルートを計算し、道路距離と直線距離を比べました。中央値で道路は直線距離より23.5%長く、広島〜松山では約2.9倍です。

Brent van der Heiden18 min read
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直線距離と道路距離の違い:実際の移動はどれだけ長くなるのか

広島と松山の直線距離は67 kmです。ところが車で最速ルートを走ると193 kmになり、直線距離のほぼ3倍です。一方、東京と仙台は直線304 kmに対して道路368 kmで、増えるのは21%だけです。

この記事では、ヨーロッパ、イラン、ロシア、トルコ、日本、インドネシアの116組の都市ペアについてルートを計算し、道路距離を直線距離で割りました。中央値で、道路は直線距離より23.5%長くなりました。 全ペアの半数は16.5%から32.9%の範囲に入ります。極端な値を生むのは海と山です。

直線距離とは

直線距離とは、地表上の2点を結ぶ最短の経路の長さです。道路、川、国境、地形は考慮しません。球面上の最短経路は大円の弧になるため、同じ値を大圏距離とも呼びます。

平面の地図では、この線が曲がって見えることがあります。Web Mercatorの地図に引いた長い直線は、多くの場合最短経路ではありません。理由は地図投影法の記事で解説しています。距離そのものは2点の座標、つまり緯度と経度だけで決まります。

道路距離は、実際に走る距離です。道路網に沿うため直線距離より短くなることはなく、実際には必ず長くなります。

迂回率

交通研究では、この2つの比を迂回率(circuity factor)と呼びます。

迂回率 = 道路距離 / 直線距離

迂回率1.00は、道路が完全にまっすぐであることを意味します。1.25なら直線距離より25%多く走ることになります。Ballou、Rahardja、Sakaiは2002年に複数の国の迂回率を発表し、座標だけから道路距離を見積もれるようにしました。

迂回率を左右するのは地理です。平野を走る高速道路なら低く保たれます。山脈や湾、橋のない海峡があると、大きく上がることがあります。

計測方法

2026年9月29日に119組の都市ペアを選びました。内訳はドイツ、フランス、イタリア国内が38組、その他のヨーロッパが20組、イランが27組、ロシアが11組、日本が10組、トルコが7組、インドネシアが6組です。各ペアについて次の手順で計測しました。

  1. 各都市に1地点を固定しました。 中心部の駅前や主要な広場の付近です。
  2. 直線距離を計算しました。 haversine公式と地球の平均半径6,371 kmを使用しています。
  3. 最速の自動車ルートを取得しました。 MapAtlas Directions APIを既定の設定で呼び出し、ルートの長さと推定所要時間を記録しました。
  4. 道路距離を直線距離で割り、 迂回率を求めました。

3つのルートはフェリーまたはカートレインを含んでいました。メッシーナ海峡を渡るメッシーナ〜レッジョ・カラブリア、英仏海峡を渡るロンドン〜パリ、バリ海峡を渡るスラバヤ〜デンパサールです。以下の数値からはすべて除外しているため、対象は116組です。所要時間は渋滞のない状態でのルーティングエンジンの推定値です。

日本の直線距離と道路距離

日本の10組、距離の単位はkmです。

区間直線距離道路距離迂回率所要時間
東京〜大阪4034931.235時間11分
東京〜名古屋2653461.313時間30分
大阪〜京都43561.3054分
東京〜仙台3043681.213時間56分
福岡〜広島2092841.363時間7分
札幌〜旭川1141351.191時間37分
東京〜新潟2573251.263時間56分
大阪〜高知2213471.574時間9分
名古屋〜金沢1552191.412時間56分
広島〜松山671932.872時間20分

日本の中央値は1.30で、ヨーロッパのどのグループよりも高くなりました。平野の少ない地形と瀬戸内海が理由です。

  • 広島〜松山(2.87)。 2つの都市は瀬戸内海をはさんで向かい合っています。最速ルートは東の尾道まで走り、しまなみ海道の橋で島々を渡るため、直線距離のほぼ3倍になります。サンプル全体で最も高い値です。
  • 大阪〜高知(1.57)。 西の岡山まで走ってから瀬戸大橋で四国に渡ります。
  • 名古屋〜金沢(1.41)。 東海北陸自動車道で飛騨の山地を越えます。
  • 東京〜名古屋(1.31)。 東名高速と新東名高速で太平洋側を回ります。

直線に近いのは、札幌〜旭川(1.19)や東京〜仙台(1.21)のように、平野や盆地に沿って高速道路が通る区間です。

地域別の結果

1.01.21.41.61.82.0迂回率(道路距離km ÷ 直線距離km)中央値日本2.871.30ドイツ1.20フランス1.18イタリア1.22その他の欧州1.26ロシア1.10イラン1.25トルコ1.39インドネシア1.30
中央値日本1.302.87ドイツ1.20フランス1.18イタリア1.22その他の欧州1.26ロシア1.10イラン1.25トルコ1.39インドネシア1.301.01.21.41.61.82.0
2026年9月29日にMapAtlas Directions APIで計算した116組の都市ペア(フェリーを含むルートは除外)。点は1組のペア、濃い縦線は地域の中央値です。2.0を超える値は右側の列に表示しています。
地域ペア数中央値範囲
日本101.301.19〜2.87
ドイツ121.201.14〜1.31
フランス141.181.11〜1.29
イタリア111.221.07〜1.48
その他の欧州191.261.11〜1.67
ロシア111.101.06〜1.77
イラン271.251.08〜1.61
トルコ71.391.14〜1.69
インドネシア51.301.14〜1.45
全体1161.2351.06〜2.87

フランスとドイツはヨーロッパのグループの中で低めです。高速道路が大都市から放射状に、主に開けた平地を通って延びているためです。ロシアの中央値はさらに低く、サンプルの幹線であるモスクワからサンクトペテルブルク、ニジニ・ノヴゴロド、ヤロスラヴリ、ヴォロネジへのルートは、平原を直線に近い形で走ります。トルコと日本が最も高いのは、大都市の間を山と入り江が隔てているからです。

地域ごとのサンプルは小さいため、中央値はこれらのペアの特徴を示すもので、各国の道路網全体を表すものではありません。

海外の例

区間直線距離道路距離迂回率所要時間
パリ〜リヨン3924661.194時間4分
ミラノ〜ローマ4775851.234時間59分
ボローニャ〜フィレンツェ811201.481時間19分
アムステルダム〜ベルリン5766891.207時間14分
オスロ〜ベルゲン3054781.576時間29分
アテネ〜テッサロニキ3035001.654時間41分
コペンハーゲン〜マルメ29471.6753分
モスクワ〜サンクトペテルブルク6327061.127時間5分
クラスノダール〜ソチ1723051.773時間47分
テヘラン〜マシュハド7438991.219時間9分
イスファハン〜アフヴァーズ3195141.616時間5分
イスタンブール〜アンカラ3494461.283時間56分
イスタンブール〜ブルサ911541.691時間34分

大きく遠回りになる区間の共通点

116組のうち10組は迂回率が1.5以上でした。どれも直線上に海か山があります。

  • 海峡と湾。 広島〜松山と大阪〜高知のほか、イスタンブール〜ブルサ(1.69)はオスマンガーズィー橋でイズミット湾を回り込み、コペンハーゲン〜マルメ(1.67)はエーレスンド橋へ迂回します。
  • 山地。 クラスノダール〜ソチ(1.77)は西カフカスを越えてジュブガで海岸に出てから黒海沿いを走ります。トラブゾン〜エルズルム(1.65)はポントス山脈を、イスファハン〜アフヴァーズ(1.61)とシーラーズ〜ブーシェフル(1.60)はザグロス山脈を越え、オスロ〜ベルゲン(1.57)はフィヨルドの間の山岳地帯を越えます。
  • 海岸線。 アテネ〜テッサロニキ(1.65)は直線上にエーゲ海の湾があるため、道路は西側に回り込みます。

短い移動も迂回率が高くなります。直線距離150 km未満のペアの中央値は1.29で、それより長いペアは1.21から1.24でした。両端の市街地の道路と高速道路のランプは、どの移動にもほぼ同じ距離を加えるため、短い区間ほどその影響が大きくなります。大阪〜京都(1.30)がその例です。

直線距離から所要時間を見積もる

116組全体では、中央値のルートが運転1時間あたり直線距離で78 km進み、道路上の中央値速度は時速95 kmでした。直線距離を78で割ると、渋滞のない場合の所要時間の大まかな目安になります。日本のペアでは1時間あたり66 kmしか進まず、サンプルで2番目に遅い値でした。道路が長いうえに速度も低いためです。この値で東京〜大阪(403 km)を計算すると6.1時間、ルーティングエンジンの推定は5時間11分です。

目安の係数と、それが外れる場合

直線距離しかわからない場合は、1.2を掛けてください。 今回のペアでは、この見積もりが実際の道路距離の10%以内に収まったのは116組中83組、20%以内は106組でした。中央値に近い1.25を使うと、10%以内は72組に減りました。分布は上側に長く裾を引き、ふつうの移動の多くは1.1から1.2の間にあるためです。

誤差が20%を超えた10組は、まさに海峡や山脈が行く手をさえぎるペアです。これはBoscoe、Henry、Zdebが米国の66,000か所以上で調べた結果とも一致します。病院までの直線距離と道路距離の相関は非常に高く(r²が0.9超)、重要な例外は海岸線などの物理的な障壁の近くでした。

実務での使い分けは次のとおりです。

  • 直線距離を使うのは、「20 km以内の店舗」のように場所を並べ替えたり絞り込んだりするときで、数%の誤差が問題にならない場合です。計算コストはほぼかかりません。
  • 道路距離を使うのは、実際に誰かが運転するとき、料金や精算が距離で決まるとき、海や山が関係するときです。ルートを取得するか、多数の出発地と目的地をまとめて扱うなら距離行列を使ってください。
  • 所要時間を使うのは、本当の問いが「何分かかるか」のときです。到達時間マップは指定した分数で到達できる範囲を示します。地図に描いた円ではこれはわかりません。

自分で両方を計測する

直線距離は距離計算ツールを開き、2つの場所をクリックすれば、キロメートルとマイルで表示されます。道路距離はルートを取得して求めます。各ペアでMapAtlas Directions APIに送ったリクエストボディは次のとおりです。例は東京〜大阪です。

{
  "locations": [
    { "lat": 35.6812, "lon": 139.7671 },
    { "lat": 34.6937, "lon": 135.5023 }
  ],
  "costing": "auto",
  "units": "kilometers",
  "directions_type": "none"
}

レスポンスのtrip.summary.lengthが道路距離(km、この例では493.4)、trip.summary.timeが所要時間(秒)です。長さを直線距離(402.8 km)で割ると、この移動の迂回率1.23が求まります。

方法と限界

  • サンプル: 大都市、代表的な幹線、既知の地形障壁を含むように選んだ119組の都市ペアで、2026年9月29日にルートを計算しました。無作為抽出ではないため、中央値はこれらのペアの特徴を示します。
  • 地点: 各都市の中心部に固定した1地点です。同じ都市でも出発地点が変わると、短い移動ほど結果が大きく変わります。
  • 道路距離: 既定の設定での最速の自動車ルートです。最短ルートを使えば迂回率はやや低くなります。フェリーやカートレインを含むルート(3組)はすべての数値から除外しています。
  • 直線距離: 平均半径6,371 kmの球面上の大圏距離です。WGS84楕円体で計算しても、これらの距離では差は1%を大きく下回り、どの迂回率も0.01を超えて変わることはありません。
  • 所要時間: 渋滞、国境での待ち時間、休憩を含まない推定値です。

ある住所から一定時間でどこまで行けるかは到達時間マップで確認できます。その範囲の計算方法は等時線(アイソクロン)とはの記事で解説しています。

よくある質問

直線距離とは何ですか?

直線距離は、道路や海、地形を無視した、地表上の2点間の最短距離です。球面上の最短経路は大円の弧になるため、大圏距離とも呼ばれます。道路で走る距離は必ず直線距離より長いか、最も良い場合でも同じになります。

道路距離は直線距離より何割長くなりますか?

2026年9月29日に計測した、ヨーロッパ、イラン、ロシア、トルコ、日本、インドネシアの116組の都市ペアでは、最速の自動車ルートは中央値で直線距離より23.5%長くなりました。日本の10組の中央値は30%でした。山地、フィヨルド、海峡をまたぐ場合、道路距離は直線距離の1.5倍から2.9倍になることがあります。

直線距離から道路距離を見積もるにはどうすればよいですか?

直線距離に約1.2を掛けてください。今回のサンプルでは、この見積もりが実際の道路距離の10%以内に収まったのは116組中83組、20%以内は106組でした。海や山が大きな迂回を強いる区間、たとえば広島〜松山では外れます。正確な値が必要なときはルーティングAPIを使ってください。

2地点間の直線距離はどうやって計算できますか?

MapAtlasの距離計算ツールを開き、1地点目と2地点目をクリックすると、直線距離がキロメートルとマイルで表示されます。道路距離はDirections APIでルートを取得して求めます。2つの値の比が、その移動の迂回率です。

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著者について

Brent van der Heiden

著者

Brent van der Heiden

Co-Founder & CEO at MapAtlas

Brent built MapAtlas out of a conviction that developers deserve location APIs with fair pricing and genuine end-user privacy. Before that he co-founded MapMetrics, a community mapping and navigation app. He writes about geospatial infrastructure, map data, AI search visibility, and how location data powers the products people rely on every day.

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